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当研究センターの代表者、杉村 棟/国立民族学博物館名誉教授の企画監修によって開催された様々な展覧会の記録です。





1992年3月12日〜5月19日
主催/国立民族学博物館
後援/外務省、在日ロシア連邦大使館
特別協力/ロシア連邦ダゲスタン自治共和国美術館、ロシア科学アカデミー・ダゲスタン学術センター、渋谷区立松濤美術館
協力/(財)千里文化財団、日本万国博覧会記念協会

ロシア連邦に属するダゲスタン自治共和国は、文化史的観点からみるとアジアとヨーロッパ、あるいは北方ステップの遊牧騎馬民族と南の農耕・牧畜定着民の文化をつなぐ仲介者として位置づけられています。それは文化の交流におおきく貢献するとともに、みずからも外来の文化を吸収しながら独自の文化を形成しました。この国際性に富んだダゲスタン文化の側面を、美術工芸品を中心に約400点の資料の展示を通してご紹介しました。

1994年9月8日〜11月29日 主催/国立民族学博物館 後援/外務省、朝日新聞社
特別協力/(財)祇園祭山鉾連合会、鷲峰山高台寺、徳川美術館、(株)龍村美術織物、オリエント・スター・コレクション、ティッセン=ボルネミッサ財団、プロイセン文化財団、ベルリン国立博物館、メトロポリタン美術館、リンデン博物館、ブルックリン博物館
協力/国際交流基金、(財)アサヒビール芸術文化財団、(財)なら・シルクロード博記念国際交流財団/シルクロード学研究センター、(財)千里文化財団、日本万国博覧会記念協会、フジライトカーペット(株)、(株)絨毯ギャラリー

手織り絨毯の生産地が集中する中央アジアから西アジアにかけて帯状に広がる地域は、砂漠あるいは草原のきわめて厳しい自然環境におかれ、遊牧社会が発展したところです。また、この地は、東西を結んでいた交易路シルクロードの重要なルートにあたり、幾多の古代文明が栄え、中世以来、イスラム世界の文化的中心となってきたところでもあります。このような歴史的文化的背景を有するため、絨毯には、生活用具としての意義のほか、それを織り、使用してきた人々の数百年、数千年にわたる世界観、宗教観、美意識などが集約されているといわれます。この特別展では、メトロポリタン美術館やベルリン国立博物館などの協力を得て、類例のない貴重な絨毯や本館所蔵の資料によって、こうした絨毯の歴史的、文化的背景を明らかにするとともに、東西文化交流の視点から高台寺所蔵の豊臣秀吉所用の陣羽織(重要文化財)、祇園祭の懸装品(重要有形民俗文化財)、徳川家秘蔵の絨毯などを展観することによって、我が国と絨毯との関わりを改めて考えてみました。


1998年月29日(火)〜11月23日(月)
会場/千葉市美術館 
主催/千葉市美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
協賛/花王株式会社
協力/日本航空

かつてシルクロード草原ルートを中心に発展した地域・民族の中でも、トルファンより先に広がる中央アジア、さらにカスピ海西岸のコーカサス(カフカス)は、日本ではいまだ知られざる世界といえるでしょう。しかし長く民族の攻防を続けた歴史をもち、現在も国の単位をはるかに越えた多くの民族が暮らすこの地域で、それぞれの民族が誇りをもって生活の中に育んできた美意識には注目すべきものがあります。この展覧会は18〜20世紀前半に制作された染織品、装身具、絨毯、金工品、陶磁器などの工芸品200点あまりを通して、民族の身近に息づいてきた美の在り方をとらえ、その力強く熱狂的なまでの”物をかざる”という美への行為を間近に感じていただこうというものです。


2006年4月25日(火)〜6月4日(日)
会場/広島県立美術館 
主催/広島県立美術館、中国新聞社、中国放送
後援/イラン・イスラム共和国大使館
協力/MIHO MUSEUM、(財)長刀鉾保存会、
(財)鶏鉾会、(財)月鉾保存会、
(財)放下鉾保存会、(財)北観音山保存会、
(財)南観音山保存会、(財)鯉山保存会、
国立民族学博物館
協賛/(財)絨毯ギャラリー
助成/芸術文振興基金

一目一目を手で結んで作られた美しい絨毯は、アジアの広い地域に暮らす人々の生活において欠かせない調度であるとともに、高い芸術性をあわせ持つ美術品です。とりわけペルシャ絨毯はこの地域とイスラム世界を代表する豪華絢爛な染織工芸品のひとつとして、世界の人々を魅了してきました。本展は、絨毯を通して見た東西文化の交流をテーマとし、ペルシャ宮廷文化の最も華やかな面を彷彿とさせる豪華で精緻な作品を中心に、約70点で構成。その内には、豊臣秀吉・徳川家康・伊達政宗ゆかりの貴重な歴史的資料であるとともに、美術史・工芸史上高く評価されるものが数多く含まれています。この、ユニークな展覧会は、国内所蔵家の特別の協力を得て初めて実現しました。重要文化財2点、重要有形民俗文化財9点を含む、貴重な作品が一堂に集まる絶好の機会です。







展覧会図録




国立民族学博物館創立20周年記念の特別展として開催された“じゅうたん(絨毯)シルクロードの華”の会場風景です。海外からは、メトロポリタン美術館をはじめとし、ベルリン国立博物館、リンデン博物館、ブルックリン博物館、ティッセン=ボルネミッサ財団など、数多くの美術館・博物館から、名品と呼ばれる絨毯が数多く出品され、国内からも、東西文化交流の視点から、高台寺に伝来する豊臣秀吉所用の陣羽織や祇園祭の懸装品、徳川家秘蔵の絨毯などが出品され、日本で初めて開催される本格的な絨毯展として、大きな話題を呼びました。



手織り絨毯の生産地が集中する中央アジアから西アジアにかけて帯状に広がる地域は、砂漠あるいは草原のきわめて厳しい自然環境におかれ、遊牧社会が発展したところです。また、この地は、東西を結んでいた交易路シルクロードの重要なルートにあたり、幾多の古代文明が栄え、中世以来、イスラム世界の文化的中心となってきたところでもあります。このような歴史的文化的背景を有するため、絨毯には、生活用具としての意義のほか、それを織り、使用してきた人々の数百年、数千年にわたる世界観、宗教観、美意識などが集約されているといわれます。第1部「生活美としての絨毯」では、絨毯がもつ、こうした歴史的文化的背景や、絨毯の文様に見る東西の文化交流、さらには日本と絨毯との関わりなどを、国内外の貴重な絨毯を通して考察いたしました。




庭園文絨毯/18C
イラン・クルディスタン
●556.2×233.6cm メトロポリタン美術館


ミフラーブ文(サッフ)絨毯/17c前半 アナトリア・ウシャク
●280×340cm
リンデン国立民族学博物館


ミフラーブ文(サッフ)絨毯/17c前半 アナトリア・ウシャク
●280×340cm
リンデン国立民族学博物館




ミフラーブ文絨毯/17c
オスマントルコ時代 エジプト・カイロ
●165×91cm
メトロポリタン美術館


ミフラーブ文(サッフ)絨毯/19c
中国・ホータン
●566×121cm
ベルリン国立博物館

東西アジア間の文化交流は古代のシルクロードに象徴される交易に伴って人物が往来し、文物が東西に運ばれることによって促進されてきました。それに伴って思想や技術の伝播が促され、文物に付随して芸術形式・様式・装飾文様も東アジアと地中海世界の間の広大な空間を東西に移動しました。この(文様の伝播)展示コーナーでは、東から西へ、あるいは西から東へと伝播したと見られる、絨毯に織り込まれた様々な文様を通して、東西文化交流の様子を概観してみました。


龍文(カッシレル)絨毯/17c コーカサス
●431×226cm
ティッセン・ボルネミッチ財団


花文(龍・メダイヨン)絨毯/19c 中国・ホータン
●282×386cm
メトロポリタン美術館

古文書に見られる記述によると、羊毛製の敷物はかなり早い時期に我が国にもたらされと思われますが、現存する古代の敷物は、ほとんどが不織布の毛氈(フェルト)であり、織物としての敷物(キリムや絨毯など)は残されていません。現存する絨毯の多くは、16世紀大航海時代の幕開けと共に我が国にもたらされもので、実用品としてではなく、むしろ異国情緒あふれる舶来品として、大切に扱われてきました。この展示コーナーでは、京都高台寺に伝わる豊臣秀吉の陣羽織や、祇園祭の懸装品として用いられてきた絨毯、紀州徳川家に秘蔵されていた絨毯などを展示。我が国と絨毯との関わり合いを探って見ました。

秀吉の陣羽織と同じ、サファヴィー朝ペルシアの宮廷工房で製作されたものと見られるキリム

動物文キリム/16c
イラン・イスファハーン
●194×124cm
ティッセン・ボルネミッサ財団


京都高台寺に伝わる豊臣秀吉の陣羽織
重要文化財


鳥獣文綴織陣羽織/16c イラン
●丈99cm
高台寺

秀吉の陣羽織と同じイラン・イスファハーンの宮廷工房で製作されたものと見られるキリム/現存する類例として知られているのは、世界で3点しかなく、本展で2点が展示された。


動物文キリム/16c イラン
●212×136cm
ベルリン国立博物館

祇園祭・放下鉾の懸装品として用いられている絨毯

連花葉文絨毯/17cインドまたはイラン
●256×118cm
放下鉾保存会

祇園祭・南観音山の懸装品として用いられていた絨毯
ポロネーズとは17世紀後半にイランのイスファハーンで織られた金銀糸を用いた豪華な絨毯。ポーランドで多数発見され、ポーランドの紋章が織り込まれた絨毯もあったので、ポーランド産と間違われたところから、その名称がある。

連花葉文(ポロネーズ)/17c イラン
●253×146p
南観音山保存会

尾張・徳川家に伝わる絨毯

八星形メダイヨン文/17c インド
●219×109cm
愛知・徳川美術館


祇園祭・長刀鉾の懸装品として用いられている絨毯

ロゼット・アラビア文字文/17c中国?
●177×99cm
長刀鉾保存会

祇園祭・月鉾の懸装品として用いられている絨毯

連花葉文/17cインド・ラホール
●206×136cm
月鉾保存会

第2部「生活史としての絨毯」では、手織り絨毯が生まれ、発展してきた地域の気候風土や社会的背景などを国立民族学博物館が所蔵する絨毯や絨毯製作に関する様々な資料によってわかりやすく解説いたしました。




糸紡ぎと撚糸工程の解説

羊毛素材関係資料
●トルコ・アイバズックで収集した資料
絹素材関係資料
●トルコ・ブルサ周辺の村で収集した資料


織り機と織りの工程解説

様々な織り工具
●緯打具●ナイフ●仕上げ鋏
織り機
●竪機/トルコ・ヘレケ
●竪機/イラン・コム

秀吉の陣羽織と同じ、サファヴィー朝ペルシアの宮廷工房で製作されたものと見られるキリム

動物文キリム/16c
イラン・イスファハーン
●194×124cm
ティッセン・ボルネミッチ財団


京都高台寺に伝わる豊臣秀吉の陣羽織
重要文化財


鳥獣文綴織陣羽織/16c イラン
●丈99cm
高台寺